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うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所。

過去詩 まとめ15

 

 ***ガラクタの匣***

     

 

・花の音

 

花の音に誘われて
足取り軽く道草すれば
花の音が答えてくれる
“さぁさ一緒に踊りましょう”

 

散れば花々安らかに
蝶々に吸われた蜜のあと
音色は高く華やかに
社交ダンスは風まかせ

 

花むぐりとミツバチは唄い
蝶々は何処へともなく飛んだ
花は健気な光を放ち
微笑むように咲いて踊る

 

花の音は美しく
花の音は純粋で
誘われたものの心を奪い
誘われたものに笑いかける

 

   

・紫の蝶

 

夜の森に紫の蝶がセレナーデを歌いにやってくる
きっと青い空と愛しい女の口紅の色を混ぜて生まれたのだろう


蝶の動きは優雅なのに千鳥足のようで
自分に酔いしれながらひらりひらりとやってくる


窓辺に腰掛けた黒い瞳に星々を浮かべている彼女は細く
小さな声で蝶の歌を唄う


するとやがて紫の蝶はやってきて恋の歌を唄い
森の中でぽっつりと在る彼女の家の前で遊んでいる


やがて夜は更け彼女も蝶を忘れるころには
蝶は朝焼けにまぎれて消えてなくなってしまう


セレナーデを余韻にして蝶はすべてから身を隠し
朝日が昇るのを見ずに終わってゆく


悲しき紫の蝶は愛しい女を思い浮かべて
影から影へと飛んでいく


消えた蝶は誰にも思い出されないままなのだが
きっと今夜にはまた唄いに彼女の元へ現れるだろう


   

・蜘蛛

 

糸は伸びて永遠にねじれてゆく
一本だけが強靱な堅さを持って、大きな蜘蛛を掴んでいる
蜘蛛から放たれた糸の色は虹色に光る細い糸
網を張れ、命令するように蜘蛛が動いた
他の木に張られた蜘蛛の巣の中に
小さな蜘蛛が一匹止まる
縦糸に足をおき、じっと空を眺め獲物を待つ

大きな蜘蛛は、巨大な網を張り
真ん中で悠々と待つが蚊も蠅も虻もかからない
しかし、小さな蜘蛛の方には
大きな蛾が一匹引っかかった
大きな蜘蛛はそれを不思議がったが、待ち続けるしかない
小さな蜘蛛は嬉しそうに大きな蛾をぐるぐると糸で雁字搦めにした

大きな蜘蛛は、小さな蜘蛛の方を向いた
何を思ったのか、小さな蜘蛛が張った蜘蛛の糸に大きな蜘蛛が糸を飛ばした
小さな蜘蛛は自分の採った獲物を捕られるかと、糸だらけの蛾の前に立ちはだかった
が、大きな蜘蛛はまず小さな蜘蛛を食べた
そして、悠々と大きな蛾を自分の巣へ持ち帰った


   

・ブリキ玩具

 

ギシギシなる腕を前後左右動かす
さび付いてきた顔はあまり見ないで
太い足はまがらない
腰から下は二つの箱がならんでる
腕のさきの手は何故か輪をえがき
胸にはわからないメーターも付いてる
ロクに相手にもされなくなって
倉庫のなかに仕舞われてしまう僕
君の話を聞かせてよ
最近の歌も教えてよ
僕はジャズとブルースしか知らない
愉快な踊りも見せられないけれど
君の腕に抱かれてよりそい寝てみたい
僕は寂しいとは感じないけれど
この体は冷えてさびていくだけなんだ
メッキがはがれてシルバーに光りたくない
 そのパイはどんな味なの?
 君はなぜそんな風に笑えるの?
僕に空腹はないけど
立派に口は付いてるんだ
笑ってるように見せてるけれど
えくぼもしわも出て来ないんだ
 君はなぜ涙を流せるの?
 その目を赤く腫らせるの?
僕は黒塗りの丸い目があるだけなんだ
悲しみはないけど目から水はあふれない
出来ることなら君に話したい
僕の見てきた移り変わり
みんなが僕を置いてゆく
電子の羅列に見とれている
僕はさび付いていく
忘れられることも知られることもないまま
ただただ時間にさびてゆく