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うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所。

No.35 昔話

昔々ある所にある男がいたんだそうだ
この男はぐうたらで常に怒られていた
半日以上空想ばかりして過ごしていて
皆からバカにされて四十の年月育った

 

鼠が一匹いると百の物語を作り出して
蟻が千匹いると万の物語を作り出した
その何百万とも言える物語をまとめた
分厚い日記帳は村の子供に人気だった

 

子供たちから見てもその男はバカだし
ドジでマヌケでアホウな大人だったが
「大人」の中でもそんな大人は懐かれ
子供たちが毎日家に遊びにやって来た

 

空が割れて夜が降って来た昼の話やら
山から大きな津波が押し寄せた話やら
赤鬼と青鬼と黄鬼と紫鬼と虹の話やら
ノミと魚の話やら口紅と死神の話やら

 

男はいつもそんな話を子供たちにして
子供たちは目を丸くし聞き入っていた

百年後の村でも男の空想話は伝えられ

忘れられずに生き続けているんだとさ