うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所。

過去詩 まとめ11

 

***気狂う宴***

 

 

・冷蔵庫

 

ちゃんと保存したいものは
この中に入れて
この手や足も
この中に入れましょう


私の気に入ったものは
この中に入れましょう
カレーの残り
貴方が作った肉じゃが

憂鬱に開かれた目を
この中に入れましょう
その聞こえの悪い耳も
いけない達者な口も

その柔らかい管を
この中に入れましょう
鮮血に彩られて
艶めかしく光るそれを

愛している貴方
この中に入れましょう
キツい罰のように
この中に入れましょう

そうすれば何処にも
行くはずがないでしょう
行けるはずないでしょう
この冷たい機械の中なら

貴方はそれを束縛と言いますか
理不尽と嘆きますか
でも開かれぬ口はもうこの中に
血なまぐさい冷蔵庫は今日も貴方を冷やしてる

 


・虐待

 

痛い… 今ではもう、その言葉の一ツ一ツが
鋭く研がれた刃物にしか見えなくて ただ、恐怖するしかない

ガムテープの味が 臭いが 今では唯一の憩いであり
この乱れ崩れた服は、 この身を守る唯一の鎧であり
この孤独と空腹感が、 最近出来た唯一の友人であり

僕は何処までも堕ちて 笑われてる
目の奥で云っている言葉を鵜呑みにし
僕は従って、 自分で身体を縛らなければならない
現実に生きている心地もせず ただただ暗闇のフチを 更に目隠しして歩いているのだ

この家は監獄だ 逃げ出す事も出来ず、
僕は産まれてから その事を喜べてはいないんだ

助けを乞うことも 今ではもう、おぼつかず その汚れた傷を晒すことも出来ず

口に巻かれた 手に固められた ガムテープの色だけが、
鮮やかに見えるような気がした

いつになったら、 此処を抜け出せるのだろう
いつになったら、 何処か遠くに行けるだろう

でも、 もう良い

僕には 今日もまた、 何処かに青い痣が出来、
今日もまた、 何処かに疼く瘤が出来、
今日もまた、あの刃物のような言葉に、 殺され続けるのだろう

 


・腐ル画家

 

埋没していく度に
 僕の心で咲きそうな蕾はもう日光浴も出来なくなる
傍観している人の中には
 僕への涙を流してくれる人も居ない
法悦した昔の出来事や人々は
 もう誰も知ることもなくただ永遠に埋没していく…
変節しても僕の心は前のままで
 ただ無防備に廃退していった
  野天で体を切り売りしているようで
   境涯も与えられずいつの間にか僕はただの人でなしだった
エチュードはあの頃のままスケッチブックに収まっているが
 もう一蹴されて意味もなくただの虚栄に見える
  複雑な数式にしか目のない連中には
   無駄骨と笑われ不埒とされた
不行跡になって不遇は続いて
 プラトニックに憧れ続けた
腐乱した自身の右手を見ると吐き気がして
 蔑視を避けて別懇なる友と晩酌した
ペテンなるその友は僕を嫌うくせに
 僕を褒め称えたり敬うフリをしている
  そんな彼に僕は金をやり
   酒を ただ酒を買わせてそいつを落ちぶらせていった
カルト的な彼の酒癖は
 いかにも恐ろしそうに鎧を着て虚勢を張る
そんな彼の話を聞くだけ聞いて
 僕はただ金を渡しているだけである
  金がなければ彼は消えてしまう
   埋没していく僕を見届けたあの人たちのように…
僕は悲しいのだろう
 この孤独や憂鬱をむしろ歓迎し
  抱き合って眠る僕の姿を見て悲しんでいるのだろう
人々はそんな僕の姿を笑って
 彼もまたその人々と同じように笑うのだろう
そして僕は鼻先にある池のような死にめがけて石を投げて
 その死の底があまりにも深いのに恐怖しているのだろう
彼は今日も酒を飲んだ
 僕を汚して このベッドを乱して飲んだ
しかし僕はそんな姿を見て
 やめてくれなんて思ったことは一度もない
  何故なら彼は僕と同じにおいで
   そんなにおいを彼は常に持って居てくれるから
稚気あふれる笑みからはペテンも消えて
 僕に気配すら見せないけれど
  孤独や憂鬱と共に眠るのは彼も同じだ
彼の寝顔はいつも泣き顔で
 寝言はいつも故郷や知己の名を呼んで
  そして最後には死が怖いと呟く
そんな彼の寝顔を見ながら僕は笑い
この世にも僕のように埋没した哀れな蕾が枯れて存在しているのだなと思う
そして彼の頬は優しく腐り
 腐臭を漂わせ僕はそれに歓喜する
そして僕は明日もまたこうして彼に金を渡して
 朽ちていく若々しい魂をこうやって嘲り笑って楽しむのだろう
 彼の名はバッカス
  四角く狭いキャンパスの中で大酒食らう友
   僕が創り出した虚像
しかし彼は間違いなく存在して僕を騙して金をむしり取り
 今日もまたブドウ酒を買いに行く
だからこの絵の中にあるグラスの中の酒は減らず
 彼も悠々と酒を飲んでいるのだ
僕は今日も金に火をつけて遊び
 自分も酒に飲まれながらユラユラと彼の顔を見る
今日も彼は赤い頬を上げて笑い
 卑しい目つきで僕を見つめている
バッカスは何故か僕が眠らないと喋らないし眠らないのかは不思議だが
 それも夢が作ったものだと理解し僕は笑った
キャンパスの中のバッカスは今日もまた酒を飲んで
 虚栄を張って頬を赤らめているけれど
  やはり夢で会う彼は僕に優しくペテンな友で
   彼と僕は愛し合っているように近づいている
そんな夢を見ると目覚めた後何故か僕の頬には涙が流れて
 このキャンパスに描かれた彼をまたマジマジと見つめ返すが
  そんな彼の目線は微動だにせずただ酒を片手にしているだけで
   僕は彼の態度に更にまた涙を流した

そうか 全ては幻想だったのか
そして死は 僕の辺りを彷徨き回る
そうか 全ては偽りだったのか
そして僕は 今日も金を燃やしていた
 僕は腐って埋没していき
  そんな僕を絵の中の友は同情もなく嘲笑する
 僕は何故か愉快になって
  そんな彼のために今日もまた眠る