うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.28 無駄な回顧

換気扇の轟音が鳴り響いた
隣の部屋の温度は急降下し
僕達のいる部屋は暖かくて
それを隔てる扉は戸惑った

 

僕の話を聞く健気な瞳の君
食べ終わった皿も片付けず
僕は僕の話をし続けている
君は相槌で思い出に答える

 

僕の思い出は脚色されては
削ぎ落とされて完成される
今あるものの確かさに比べ
過去はとても不確かに思う

 

日付が記された日記を読み
その情景を思い描いたって
それが本当とは言い切れず
嘘を描くことになるだろう

 

君との時間が過去になって
誰かに話す時どうしようか
鮮明に刻んで充分に飾って
思い出すことを楽にしよう

 

(変死体みたいな過去の人が
こちらに笑いかける夢には
僕と君も登場してしまって
思い出が混ざり合ってゆく)

 

次の日目が覚めれば昨日は
嘘になって死んでゆくだけ
本当の瞬間が思い出になり
抜け殻になった時間が残る