うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所。

No.8 弱者

泣き虫な男は笑われてしまうと思って
涙を無理やり奥の方に押し込めている
瞳の裏に水が溜まり過ぎて視界は歪み
そいつは目眩に悩まされ眠れなくなる

プライドを守るために愛されようとし
愛されないのなら捨ててしまおうとし
捨ててしまうのならはじめから無くし
一人で膝を抱え悩む羽目になってゆく

ある日そいつは決断をして実行に移し
自分を実態のない物に変えようとした
それは失敗して顎に穴が空いただけで
煙を吐いた銃が切なげに天井を眺めた

病室で惨めな思いをするたびに諦めて
諦めた事を忘れてゆく日々に疲れ果て
疲れ果てた心に寄り添う悪魔の囁きが
衝動を駆り立てて管を引き抜いていた

そいつは病室から出て月夜に紛れ込み
小さな自由を感じて深呼吸をしてみた
朝になる頃には病室の布団に戻ったが
悪魔の囁きは二度と聞こえなくなった