うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.190 サイレン

涙を啜る音でサイレンの音を掻き消す ひび割れた硝子の向こうで子供が遊んでいる 蛍光灯が死んでいる時は外も明るい カーテンを閉めれば気になるものはない シフトを書き込んだノートを眺めながら 黄ばんできた壁に もっと煙を吐き捨てて 啜った涙を洗面器に…

No.189 皮

人と人とを結ぶものがあるとすれば それが言葉であることは明白だ だから準備をしなければならない 継ぎ接ぎだらけでも まともに見えるように 君は身の丈にあった服を着る はい と いいえ はポケットにしまっておけ そして何より重要なのが その服が受け入れ…

No.188 センチメンタル

空になったペットボトルを潰そう 台所に積まれて 悲しそうだから 白紙に戻せないノートを千切って 懐かしい詩と 一緒に捨てよう 変わりゆく全てに思いを馳せるより 変わらないものの方が心地良いのは きっと 忘れるために思い出して 思い出すたびに忘れよう…

No.187 霧の晴れた街

霧の中に立つ男 瞳の中に秘めた想い 煩わしいものから解き放たれた さて 目指すは霧の晴れた街 夢見心地の女が言った 「私と踊って騒ぎましょう」 男は黙って歩いて行った 「黙りこくって気味が悪い」 キーが刺さったままの車の方へ こつり こつり と近付い…

No.186 飛ぶ脳みそ

急ぎ足で何処へ行く 脳みそが 音速で 何処かへ びゅう と 足元確かめて 手元も確かめて つりそうになったから ひたすら伸ばす 急ぎ足で出て行った あいつが 光速を 超えたら びゅん と 足元硬くして 手元も硬くして つりそうになっても ひたすら耐える 帰り…

No.185 青梅線

青梅駅はいつものように殺戮の嵐 東青梅駅は悲しい雨が降っている 河辺駅は草臥れ老夫婦が手を繋ぐ 小作駅は金無しが金を探している 羽村駅は靴を磨く少年の霊が居る 福生駅は難しい顔の青年が首吊る 牛浜駅は切り刻まれた本のページ 拝島駅は陰ある背中を晒…

No.184 器用不器用

人を真っ二つに割ったとしたら 右に落ちるか左に落ちるか 横に切ったら 上か下かだ どちらにしても まだまだ切れる 器用な人間を 不器用さが笑う 不器用な人間を 器用さがあしらう 器用/不器用 その切り口に 一輪の花を咲かせてみせよう 電車の中で 押し合い…

No.183 コミック愛憎家

吹き出しに書き込んでいた文字を消して 加えて効果音も搔き消したんだ 更には 吹き出る 怒りに 任せて オリジナルをホワイトでぼやかす 狂った世界のように見えた 映った景色が全てに思えた ありふれた嘘を並べ立てても 愛も友情も全て消せるんだ 美しいだろ…

No.182 夢追い人

初めての春が訪れた 生まれ変わる時は訪れた 話をしよう 誰とでも良い 僕は誰か あなたは誰か オレンジの線の 電車の近付く音が 馴染みの駅で鳴り止んだから ボタンを押して乗り込んだ 重たい鞄 引きずって 降ろして 前しか見えない 前しか見ない そうなれた…

No.181 bets

ランドセル背負った兎が臆病そうに犬に追っかけられたそれを見て 富裕層の猫は金を賭けた食われりゃ終わり それっきり キンコンカン 鐘の音がして金を賭けた猫たちはそれを仕舞って自分の教室へと 急いで駆けたランドセル背負った兎と臆病そうな犬は とぼと…

No.180 草臥れた暇人

考え過ぎて頭の中が地獄のように燃えたぎる時氷山の中 或いはかき氷の中を掻き分けてみるしかし 頭の中は相変わらずマグマが渦巻いているいくつもの試練 思い 記憶 そして月々の支払い… さて 夕暮れ時も終わってしまった今日という日にさようならを言うのも…

No.179 歪めいた形

感傷的なあなたと 不感症気味なわたしに 一輪華を添えて あの人笑顔で 手を振っていたの 夢みたいなイルミネーション 狂ったように見えるでしょう? 悲しいことなんて何もない わたしは言い聞かせた あなたに ブラックコーヒーと タバコの香りで 涙がいっぱ…

No.178 海底の泥船

見覚えのある社内の風景とは少し違って見えたがその時の私は 馴染み深いあの場所だと思った 社員は新しいのも増えて 私が座っていた椅子は二つに増えていた見たことのある人もいたが 中には見たことのない人もいた 最低賃金のギリギリの海底を進む小さな船の…

No.177 社員

押し込んだ憂鬱を 溜め込んだ苛立ちを 二言目にその添えそうになる 後はつまんで食べてくれ 工場の隙間から 見えている景色には 灰色の膜が張り 火種になりそうなダンボール だだっ広い駐車場 真っ白なシフト表 誰も居ない 居た形跡もない ルールの中 ループ…

No.176 旅

旅をしよう 何処に行こう? 服を着よう 何を着よう? 覚めた朝 冷めた風 良い加減 飽きた街 見慣れてた 景色から 変わるには 三時間 旅をしよう 此処に行こう 夢を見よう 追いかけよう 春の言葉 尋ねたら おばさんは こう言った 「花言葉 精神美」 難しい わ…

No.175 喪失

ぶっ倒れそうな身体をベンチに座らせたこの公園には煙草の吸殻が多過ぎた捨ててあった空き缶を灰皿にして眩しい太陽から逃げるように日陰 そう はぐれてしまったのだ勤め先には 訳あって行かなくなったそれから身体は日を数えるごとに重くなるしこのままでは…

No.174 日記のようなもの(3/25)

だだっ広い場所の大きな金属錆びて こちらを向いている僕らは目的も無く歩いて来た花に止まる蜂や 屋根の上を歩く烏 そして ぶっきらぼうに積まれた大きな金属の写真を撮りながら 久し振りに煙草を買った頭はぼんやりと春を確かめていた子供の多いマクドナル…

No.173 誰かよ

右目に走った 稲妻のような赤い模様が トテモキレイネ と誰かが言った 寝不足に足を取られそうになり まともな布団が欲しいと思った 誰かよ 不健康さを笑ってくれ このままでは真空のようだ 誰かよ 決して断定されることのない人々よ 理不尽なものから 掬い…

No.172 ほんの短い家出

閉店したスーパーの前を横切る駐車場に車は当然無い目的を探して歩くけれどあてもなく彷徨う羽目になりそうだ (一人になりたい君は 寒そうな外に出かけた その後を追うわけでも無く 僕は煙草を買った 夜空に吸い込まれてゆく煙が 何故か寂しそうだ 満天の星…

No.171 従者

一日中煙草でも吸って意味の無いことを考えていたい 改札でごった返す人の波も通学路で遊ぶ賑やかな声も憂鬱な顔をして佇むビルも何も無い一日を ただ過ぎる一日を 求めながら 彷徨う頭の中は何処までも広がる空洞のようで見渡しても 音を鳴らしても果てなど…

No.170 ヒトデナシ

飛び出して行った君は何処へ行くのだろうか僕はどんな顔をして君を待っていれば良いのだろうか 僕だってまともに 人間になりたい君だってまともな 人間になりたい 逃げ出して行った君は何処へ着くのだろうか君はどんな顔して僕を待っていてくれるのだろうか …

No.169 ・

ぷちり ぷちり 千切れ 途切れ悲しいほどに 通信は途絶えただただ 時間 そして 空間一人でない時でさえ 一人に怯える 凍てついて窓の外はきっと雨模様部屋の中の常夜灯をもう少し暗くして待ちたい 雨の上がる瞬間晴れ間がそっと見えて雲たちが忘れ物を取りに…

No.168 空想癖

煙草を吸うと頭ん中ぽっかり空いてどろどろになった思想が垂れ流される日々の中で叩かれた臆病な心たちはそんな思想が嫌いなのか目を背けている ニコチン タール そんなもの全て嘘っぱちでただの紙 ただの葉っぱ そんなものでどこを見ても偽物にしか見えなく…

No.167 洗濯物

草臥れたシャツがハンガーにかかるベランダにある洗濯機は黙っている陰気な空で 健気な夢が わだかまりから 絆され 解けて 部屋干し日和 そしてまた一人数えやすい友人の顔をハンガーにかけて 黙ったままでわかりやすい記憶を探す もしも 借りた部屋の壁に夕…

No.166 街の影

煌びやかに彩られている街 着飾る人々その中に薄汚いコートを着た男が立つ虚ろな瞳で彼は何を見ているのだろうそれは誰にも知られることのない真実 かつての彼は…などと語る人もいないぼさぼさの髪を掻き毟りながら独り言誰に対してというわけでもない悪態に…

No.165 猫

私は知らない彼がどこに出かけているのか いくら心配をしても夕方ごろまで遊んでいる 彼が何を見たのか彼が何を感じたのか そんなものは 知らなくて良い何よりも大切なのは ここへ戻るということ わが家を わがものとして彼は暮らしているのだろうか はたま…

No.164 犬

じっと見る そっと閉じるまぶた そして開く 瞳はこちらを向いたまま 牙とは 爪とは 何か 餌を食べるため 餌を捕らえるため ただ こいつの餌は 道端を転がる 小石のようなもの 耳とは 目とは 何か 餌を測るため 餌を見つけるため ただ こいつの餌は 昨日 私が…

No.163 poetry

ノートは綴る詩は いつもと違う ましてや 丁寧に 慎重に 綴る詩は もっと違う 便利でない この 頼りない脳が全てまかなう どんな字体に寄せても 結局は同じ僕が綴る 埋め尽くされる空白に 名残など無く 淡々と過ぎる時間にも 名残など無く 窮屈な この頼りな…

No.162 ミルクチョコレート

夢の中で食べたチョコレートミルクの味が濃かった何度か食べた味で「またこれか」と感じていた ピーナッツのような小さな思い出のかけらと一人きりのままの自分といつかは一緒だった家族が 夢の中ではバランス良く配置されていたから僕は打ち明け話をした今…

No.161 ノラ犬

酒に溺れ ギャンブルとマリファナ漬けのノラ犬が動物園に行った 「そこには見たこともない模様の綺麗な猫がいた金さえあればあの猫だってマタタビ代わりに自分を愛でると思ったが保健所送りが間近なんで儚い夢だと笑っておくれ」 ペットショップで聞いていた…