うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.220 無題

無機質な眼差しが捉える 彼は微動だにしない 生きているのかすら定かではない ただ 硝子玉のような瞳はこちらを見る 品定めが済んだら 値段を書いたネームプレートを渡され 黒い壁の部屋に通され 彼はそこまでの案内役を務めて消える 誰かの声がする 二倍 三…

No.219 無題

ただ一つとして同じものは無いのなら 惑わされてはいけないと彼は言った 理解し合う必要は無いと 彼女は考え 彼の元を去っていった 彼は悲しみに暮れた 扉を一枚隔てて 彼女がいるような気がして 彼は問い続けた 答えは無いと知りつつ 少し掛け違えただけで …

No.218 鉄

鉄を飲む もちろんそのままではない サプリメントは気休めに思えるが しかし 鉄が足りない 飢えている 舌や内蔵が頑丈であれば多少の錆でも と 鉄を食う もちろんそのままではない 刻み フライパンの上に油を垂らし キャベツやもやしも入れよう そしてバラン…

No.217 零時半

ストローで最後の一滴まで啜る音が 耳にこびり付いて眠れなくなるような夜 外で何が起ころうが気にすることもなく ただ孤独に蛍光灯を瞳で反射する 特別なものだと言われたこの眼鏡ですら 鼻に跡を付けるものでしかなく 青い光など遮る余裕も何処へやら行っ…

No.216 ゴム

ありふれた一日に 少しだけほつれがあることを見つけた 彼はそわそわし始めて 何をするにも落ち着きがなかった そのほつれは次第に大きくなってゆき 気が付けば彼と同じほどの大きさになった するとほつれは彼を飲み込んで この世ともあの世とも言えない場所…

No.215 未明

朝焼けの前の青さに 吸い込まれた夜が バイクの走る音に 最後を告げられて 街が反射する カーテンの隙間から見える 何もかも 灰色に 燃え上がるこの時間は 心の中まで この灰に取り憑かれ 息をすることも 恥ずかしくなる 寝相の悪さのせいで 台無しにしてし…

No.214 綿雲

君がどこへ行くのか 誰にもわからない けれど君と僕は 出会わなければならない 空を見上げる 二度と同じ形のない君に 願いを乗せてみよう 美しい場所へ 君だけでも 雨の日には見えない太陽よりも 快晴では見えない君の方が 僕にとっては 悲しいことで 眩しさ…

No.213 灰色の烏

振りやまぬ雨の中に 灰色が映る 水溜りに沈みそうな 街の中で揺れる そっと閉ざした傘を片手に 呆然と月があるはずの 空を眺める 金切り声をあげた ブレーキ音に 戸惑いを隠せずに 少しだけたじろぐ 塞ぎ込んでいたはずの 勇敢な涙が 野良犬に吠えられて 引…

No.212 薔薇

少女は悲しげに 蝶を追っていた 「幼き日々」とは 一日が早く過ぎて あっという間に 帰る時間になり 心配事と言えば 大したことはない 家に置いて来た ぬいぐるみを 弟がいじらないか そんなことだった 何もかも咥えこんでしまう そんな意地汚い口の中で 或…

No.211 絵描きのお絵描き

筆を取る子供たちの指が 絵の具を弾いている 服に付いたことも気にしていない ただ白い場所に 色を乗せるだけで良い 僕は 茶色い椅子に座って見ていた その光景に飽きは来なかった 夏になろうというのにカーテンも閉めたまま 部屋に閉じこもるのも悪くはない…

No.210 穴の空いた身体

目を閉じると不幸な自分が見える 不幸さを笑う他人も見える 見て見ぬ振りした奴らも見える それを眺める自分すら見える 全てが思い通りの空想の中でも 僕は僕の檻から 抜け出せたことはない いくら気取っていても 筒抜けのようで 穴だらけの身体に また穴が…

No.209 通り過ぎた夢

愛していた人の夢を見た 一つ一つの場面が良く出来ていた だけど僕は夢のストーリーに乗り 目が覚めるまでそれに従っただけ 彼女はあの頃のままの姿で 僕は少し辛くなった 周りの友達も居たけれど あの頃のようにはいかなかった 遠く離れて居たうちに 彼女は…

No.208 真夜中のサングラス

かけたサングラスを悔やんだところで 真夜中の散歩道は引き返せない 内ポケットにしまい込んだ銃の形のライター 脅しの文句は百通り以上ある それでも臆病さはつきまとうもので どんなに意地を張っても幽霊はいるもので 後ろから足音が聞こえるようで サング…

No.207 仮面・子供たち

車の外で仮面を被った子供たちが遊んでいる 僕は助手席に座りながらそれを眺めた 荷物を運ぶのにどれだけ時間がかかるのだろう やらなければならない事はたくさんあるのに 仲間からの連絡でリーダーは待機を命じた どうやら取引に問題があったらしい 国外の…

No.206 Digital watch

僕が持っているデジタル腕時計は一時間ごとにアラームが鳴る 三十秒早く設定したのは遅いよりもマシだからだ しばらく付けていない内に時計は一分強早くなっていた 別の時計に合わせて時間を調整した 一時間ごとに三十秒早くアラームが鳴る 僕はそれを基準に…

No.205 天国に一番近い街

オウムガイが繁殖している街で 餌になるのはエビでは無い 孵化を助けて 飼育を励ます小鳥 種の保存は海以外でも出来るらしい 透明の駅の中のバクテリア ステーキハウスとビヤホールが並ぶ 喫茶店の内装はニューカレドニア 移民たちの朝市で買った果物を食べ…

No.204 お題「愛は、時として刃物だ。」

愛は、時として刃物だ。 真実は、いつも残酷なものだ。 分かり合えないと誓いも揺らいで、 寂しさに隠れたくなり、心を閉ざしたくなる。 そして考える。僕らは何を求めているのだろう、と。 明日の朝目覚めて、愛する者が隣にいると、 何故言い切れるだろう…

No.203 2018.05.16

頭を上手く開いて 中を歯ブラシと洗剤で磨きたい 脳がナイロンのセーターを着ているみたいだ 昨日見た映画の登場人物が夢に出て来た 僕らは四人兄弟で 偽りの家族を演じていたみたいだ 両親の浮気 兄と弟の口論 そして粉まみれの殺人 何もかもが記号的なもの…

No.202 男

人通りの多い昼の街に 人見知りの男は歩いていた 心が奪われた昨日の夢の中に 車輪に擦れた一昨日の女が出てきた 百円で買った飴玉を舐めながら 笑いかけた女を映し出す星は 太陽に照らされて消えてしまった 男は気分が晴れるような気がした 要領の良さが 毛…

No.201 女

人のいない夜の街に 人影を探して女は歩いていた 心が奪われそうになった午前は 車輪に擦れた午後に殺された 百円で買えた時計を合わせて 笑いかけた男を映し出す星は 月に飲まれて消えてしまった 女は吐きそうになって座った 遣る瀬無さが 恥じらいが 一緒…

No.200 兄弟

焼き過ぎたパンにバターを塗って 頭がおかしいほどジャムを塗って 朝っぱらから音楽かけて 昼までかけっぱなしで 外まで聞こえるナルシズム 彼は嫌われ者 行き過ぎた言動をパターで打って 小さな穴に入ってジャブを打って 朝っぱらから罵詈雑言で 昼まで怒り…

No.199 どうせ

どうせ儚いものならば いっそこのまま消えてゆけ どうせ拙いだけならば いっそこのまま幼子のように 軽い気持ちも 重い気持ちも 風船と岩石の 間の気持ちも 楽しい時も 苦しい時も 浮いて沈んで 物語る時も 前向きも 後ろ向きも 上向きも 下向きも 右分けも …

No.198 誰かの愛

誰が誰を好むのかなど 誰も気にすることはない 何が何を望むのかなど 何も気にすることはない 彼は彼を受け入れるか 彼女が彼女を突き放すか 彼が彼女と手を組むか 彼女が彼を手放すか そんなことなどちっぽけ過ぎて 何の役にも立ちはしない そんなことなど…

No.197 砂の愛

青い空の下でアスファルトは輝く 雨上がりの朝は 冷たい風が吹く あなたの微笑みで 太陽は乾かす あなたの温もりで 太陽は息する 何年か前に 友人に言われた 「やまない雨はない」定型文のようなもの 答えた言葉は覚えていない 信じられなかったことは思い出…

No.196 ただ ただ 巡る日々

都会が瞳を閉じている 閉じ込められているのはこちら側 田舎が瞳を閉じている 閉め切られてしまえばこちら側 摩天楼も 大きな木々も さほど魅力になりはしない 窓から見えるオフィス 季節を感じる森 さほど興味になりはしない ただ ただ 巡り 老いてゆく 同…

No.195 ひと夜

ひと夜 一人きりの雨に 濡れたガラスの破片が散る 石を投げたあいつのことを 忘れようにも風が吹く 穴の空いた心 貧しく光る 夢見心地の時は 静かに沈む 暖かな感情はマンモスのように 氷漬けにされて眠りに就く 「触れた指も 唇も あいつのために用意したわ…

No.194 個

限りのないものがあるとすれば それに似たものは宇宙となるのだろうか それよりもある男は 一本の煙草を吸った時に見える 絶望的な未来予想図の方が 限りないものに思えた 喫煙所に群がる人々の 気の抜けた目を見ていると 彼はその目に煙草の火を押し付け 立…

No.193 途

路上に座る男が意味のない言葉を並べ立てていた それを隣に座ってメモを取った 「アルコール アンコール アンコールワット アルコールワット…」 ボールペンを止めると 彼はこっちを向いていた 立ち上がり逃げようとすると彼も立ち上がり 何処か目的があるよ…

No.192 溺れた男

明日までの切符を買う 行き先を特定されてはならない 男はスーツで身を固める 満員電車の中 彼は 不特定多数と共にある ゆりかごで眠る赤ん坊を眺め 家に置いてきた財産を数える 張り巡らされた広告を眺め 家に置いてきた支払いを数える 特別なことなど何も…

No.191 悪る道

陽の光を遮断しておいた部屋の中 肌寒い空気に充満している埃 誰も会う人などなく突っ立ったままで 数を数える 一 二 三 四 … 車のキーを無くした 元から車など持っていなかった 充電器を刺し忘れた 元から充電をするものがなかった 銃声が聞こえる 銃など持…