No.138 加工写真と詩 Part2
【眠レヌ夜】
題が付いたものと、付いていないものです。
No.136 私と僕の愛
私の脳細胞 しっかりと捕まえて
あなたの好感を 搾り取るための愛
僕の老廃物 しっかりと流して
君の愛し方を 否定するような愛
振りまいた愛想と 振る舞いの愛憎と
混じる心と吐息は 冷めた素肌となって
やがて朝になる夜を 過ごしている時を
恥じる病とノイズは 冷めた光となって
差し込まれて 私の中へと
差し込んだら 僕の中へと
私は諦めて 差し込まれ
僕は改めて 差し込んで
光は一つになって 境界線はなくなる
朝も夜もなくなって 私も僕も一つに
二つに離れたら 愛すら忘れて
ただのあなたと 君になって
他人を着飾って 出かければ
腕を組むこともなく歩く
他人の言葉を 掛け合っていれば
誰にも気付かれずに歩ける
No.135 少女とウサギとヒツジ
こそこそ話す
ウサギの群れが
夢見がちな
少女の
夢の中で
陰口を叩くたび
少女は
うなされて
首元を掻いて
明日の
6時間目の
心配をしながら
放課後の
友人たちとの
関係を
模索していると
ウサギたちは
夢から出て
ヒツジたちが
代わりにやって来るのは
人々への恐怖心を
反映させているからであり
ウサギの残骸は
ヒツジたちの
寝床になっている
No.134 雄弁な木々
(詩とは
小さな物語?
大きな世界?
たったひとつのもの)
木々が雄弁になると
窓ガラスは黙り込む
僕は椅子に座って
そんな景色を見ている
冷えてしまったコーヒー
香りは出て来た頃より薄れて
飲む気力まで失せてゆくと同時に
僕は木々の語りに聞き入った
「何年前にここに来たかなんてことは忘れてしまったが引っこ抜かれた彼らの代わりに我々は植えられた」
そのことを僕は知っていたけれど
彼はあまりにも
真っ直ぐ 伸びすぎていたので
窓越しに
不味くなったコーヒーを飲み干して
僕は席を立つことにした
No.133 変わることのない景色
変わることのない景色が彼を閉じ込めている
懐かしさに恋い焦がれ過ぎ去った時を磨いても
輝くのはひと時だけですぐに虚しくなる
忘れ去られた人々はいつも彼の周りを漂い
恨みつらみも無く ただただ報われずに嘆いている
そんな彼を愛した人もいた
そんな彼も人を愛していた
変わることのない景色の中で
彼は変わっていった
大きな雑音に巻き込まれて押しつぶされそうになって
彼は自分の顔や手の皺を見て最期の時を悟った
変わらない景色の中で老いていった彼に残ったものは
愛し 愛されていたと信じていた心だけだった
そして 変わることのなかった景色はどこまでも真っ白な空間に変わった
その真っ白な空間の広さに打ちのめされながら
彼は彼を忘れてしまった人々に嘆いている
No.132 あいつ
感覚がなくなるまでつねった頰
感覚がないのでいつまでもつねる
つねる必要すら無かったと知り
見知らぬ世界を歩き出す
知った顔が何人かいる
時代や性別がごちゃ混ぜだが
あれは担任の教師だったか
あれはいじめっ子の女装か
不思議なことに
人気者になれた
あいつを探したけれど
あいつは見つからなかった
鏡が現れた
大きくて高そうだ
自分の顔を見ると
あいつの顔になっていた
周りの人々がこちらを見て
あまりにも驚いていたので笑った
あいつだから人気者なんだ
あいつだから驚いているんだ
憧れはなく
蔑んでいたあいつが
初めて羨ましく思って
悔しさで涙が溢れた
目覚めると
天井が低く見えた
壁は近づいて見えた
窮屈な部屋を出て空気を吸った
そしてあいつは
死にそうな顔で道を歩いていた
何故か安心して呼び止めると
あいつはこちらを向いて笑った
No.131 お似合いの二人
何をするにも覚束ない男と
何をするにもそつなくこなす女
二人は出会ってたちまち恋に落ちて
落ちた理由も分からぬまま真っ逆さまに
派手に着飾って飲み歩いた街並みに
小鳥が飛んでカラスが鳴いて二人きり
覚束ない足取りとそつなく動く頭で
計算してみれば明日はきっと夢心地
何気なく言った一言で窮屈になり
男は女を振り払うために必死
何気なく蘇った考えで幸福になり
女は男にしがみつくために必死
何をするにも冴えない男と
何をするにも要領が良い女
二人は出会ってたちまち愛に溺れて
溺れた理由も分からぬままに真っしぐらに
派手に飲み歩いた後に着く男の部屋に
置き忘れていた女のピアスと二人きり
覚束ない思考とそつなく動く身体ごと
計算高い女は明日はきっと夢の中
何気なく言った一言でその気になり
男は女を引き止めるために必死
何気なく裏切られた気分で不幸になり
女は男を見捨てるために必死
そんな毎日を繰り返す 怠慢な自由に
待ち構える未来は真っ暗な二人きり
美しく燃える朝日か夕日かも分からぬ太陽が
二人きりの部屋に差し込んでいる