うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.74 シルクハット

 

 

暗がりで発光するシルクハット

目を凝らしても素顔は見えず

スチームパンク気味の都会の中で

浮いて見える青いシルクハット

 

 

何処かに消えても誰も追いかけず

誰かに話しかけることもなく

ただただ時たま現れては消える

発行する青いシルクハット

 

 

どうしても僕は追いかけたいのに

追いかけようとした瞬間に消える

どうしようもなく不安になるから

シルクハットを被って色を塗る

 

 

同じような人が増えてきた

僕は浮浪者と友達になった

疲れ果てて残飯を漁りながら

青々と光る暗がりのシルクハット

 

 

合わさったピースが欠けたら

繋ぎ合わせるために身を削った

都会の尖った場所に当てはめ

僕のいる場所と決めたシルクハット

 

 

紳士でもないのに澄ました顔で

時代錯誤なのに気が付かないで

頭皮にくっつき離れなくなった

ややこしく光り続けるシルクハット

 

No.73 友達いらない

 

友達いらないなんて
強がりを言って笑って
本当に一人になれば
誰かを求めるくせに

 

くだらないこと喋ると
くだらない悩みが消えて
くだらなくないことだけ
気付かせてくれるのは誰?

 

小鳥のような囀り
あれから変わった景色
みんな大人になったら
昔話の花咲かせ

 

くだらないこと喋ろう
くだらない悩み語ろう
くだらなくなくなるまで
気付かせてあげられるまで

 

多数決で負けたとして
少数派は寂しくて
そんなとき会いに行くよ
作り話の花咲かせ

 

くだらないことで笑い
くだらない悩み忘れて
くだらないくだらないって
うわ言のように繰り返し

 

くだらないことしかない
くだらなくなくならない
くだらない僕はいつも
誰かに語りかけている

 

No.72 石になったガム

 

吐き捨てたガムが
コンクリートに張り付いて石になる
それを見ながら彼は
人を待つことに飽き始めている

 

吹き荒ぶからビルは傾いて見え
傾いているから彼は落ち着く
ポケットにしまったライターを取り出し
煙草に火をつけると涙をこぼす

 

さあ うちに帰ろうか
あてもなく彷徨い歩く日々を終わらせて
彼の家は此処から遠く
電車は一時間に二本しかないけれど

 

煙草を灰皿に落として
水に浸かる音を聞く そして彼は思う
(これが夢ならどれだけ救われるか)
退屈で窮屈な人生のつまらない仮定

 

やっと来た電車の中はからっぽで
しばらくは貸し切りで揺られる
徐々に人が多くなると擦れる雑音で
熱を帯びた脳がストレスを抱く

 

さっき見つめていた
石になったガムが羨ましい
誰もいない静かな場所で
じっとしているだけで良いのだから

 

 

No.71 詩人の詩

 

朝早くに小鳥のさえずりが聞こえて
冷えた部屋の床に足をつける
ありふれた日常とありふれた寝不足で
ふらついた思考は時間の波間を漂う

 

おかえりとただいまを同時に言えたなら
僕はこの部屋から出なくて済むのに
電気を付けて寝癖を直しながら
自分の中で何かを殺さなければならない

 

詩人たちは今日も空回りしている
街は穏やかに彼らを包み込む
詩人たちの憂鬱を吸い込んだ空は
今にも壊れそうに青く佇む

 

僕は思ってもいないことを
他人に話さなければならない
いつか帰るべき場所を探して
本心を隠し通さなければならない

 

それに疲れたら一瞬でも忘れて
詩を書いてみるよ それが詩と呼べなくても
誰かに必要とされたいと思っても
詩は書いた途端に僕のものじゃなくなるけれど

 

疑うことや怒ることをやめずにいよう
僕は彼らに追いつけないかも知れないけれど
好きなことを絶えずに続けていれば
いつか小さなものでも遺せると信じて

 

詩人たちは苦しまなければならない
苦しみを詩にしなければならない
そう自分を追い込んで行くと
どこかに消え果てたくなってしまう

 

だから僕は今日も誰かの皮を被って
異星人と話すように誰かと話すだろう
その皮が剥がれ落ちたその時に
僕を理解出来る人は僕の詩を読むだろう

 

 

No.70 自由で不自由なあなたと

 

苦しむなら自由に苦しみたいものだ
縛り付けられた考えに悶えるだけの日々だ
縋り付くもの全てが熱い鉄のようで
焼けただれた手のひらが鬱陶しい

 

悲しむならあなたを巻き込みたいものだ
縛り付けて考えを押し付けるだけの日々だ
縋り付いてくればもう二度と離さない
一つになった手のひらが神々しい

 

暗がりで怯えて 強がりで構えて
それでも明日が一番怖くて 昨日が一番辛くて
今日の日こそ好きになれそうだけれど
あなたがいないせいで結局は骨折り損だ

 

楽しめるなら不自由に楽しんでも良い
縛り付けられて部屋に籠るのも良い
縋り付くものなど振り払えば良い
焼けただれた手のひらは冷やせば良い

 

 

No.69 流れ着く先

 

触れたら溶け出す 氷のように
かけがえのないものが 液体に変わる
狂い出した時計の針を止めて
雁字搦めの鎖を解いて (今すぐ)

 

車の中のスノードームが転がって
ブレーキの下に挟まった
止まれなくなった車は壁にぶつかり
フロントガラスにはひびが入った

 

何故か無傷な身体を擦って
静電気を発生させながら夜中を見上げる
月はとても綺麗に微笑んでいるから
ずっとここに居たいと思った

 

パトカーと救急車のサイレンが聞こえる
心配そうな野次馬たちがこちらを見る
はめていた腕時計を見てみると
昨日見た時と全く同じ時間を示している

 

溶け出したらあとは流れてゆく
失ったものはもう取り戻せずに
狂うのをやめた時計の針を回し
明日起きたであろう時間に合わせる

 

 

No.68 夢の住人

 

遠い昔 夢を見ていた
少年は 今はもういない
悲しいけれど 事実を歌う
私はきっと 夢の住人

 

遠い景色 眺めていても
少女には 何も見えなくて
寂しいけれど 事実を歌う
あなたはきっと 夢の住人

 

少年と 少女には
私たちは もう見えなくて
切ないけれど 事実を歌う
やがて消える 夢の住人

 

頭の中だけ 世界が広がる
行方知れずなら とりとめもない
貧しいけれど 幸福歌う
静かに踊る 夢の住人